本年度は、研究目的に従い、以下の通り実施した。 (1)比較教育学的アプローチによる研究 アメリカ合衆国の家庭教育に関するスタンダードと中等家庭科教科書について、アメリカの家庭教育におけるキャリア教育の理念と具体的な実践方法について分析した。その結果、理念的な面に関しては、労働の意義と職業や仕事に必要な資質(知識・理解、スキル、態度・能力)が目標レベルで明示されていること、就労の準備として自己を知ることの重要性が認識されていること、職業や仕事が家庭生活と結びつけられていること、などが明らかとなった。また、具体的な実践例としては、抽象論ではなく具体的な実例を多く取り上げることにより、より生徒が理解しやすい工夫がなされていること、また、自己分析ができる工夫がされていること、などが明らかとなった。 (2)歴史的アプローチによる研究 わが国の戦前の家庭科教育の教育文化を明らかにするために、本年度は特に戦前の女子教育に関する資料を収集した。なお、資料については現在分析中である。また、戦前の高等女学校の家庭科に関わる諸科目(家事科と裁縫科、家政科、理科及家事など)がカリキュラム編成において、例えば、戦前を通して裁縫科が家事科よりも時間数が多く配分されていた理由を、女子教育思想との関係から分析している段階である。 (3)カリキュラム開発のための実態調査および実践研究 生徒の実態把握とカリキュラム開発の予備調査として、昨年度および本年度の研究知見をもとに検討し、家族・ジェンダー・キャリア教育を中心とした中学校家庭科授業実践を行った(平成18年1月〜2月)。授業前と授業後における生徒の、家族、ジェンダー、キャリアに関する意識調査を行った結果、各々の項目に関して生徒の考え方の変容が認められた。
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