本年度は、研究目的に従い、以下の通り実施した。【比較教育学的アプローチによる研究】諸外国の家庭科教育のうち、National Core Curriculumを分析した。また、実際のフィンランドの小学校や中学校における教科「家庭科」(home economics)と教科「クラフト」に含まれる被服学習(textilework)の授業観察のビデオを分析した。その結果、National Core Curriculumの教科「家庭科」では、「家族と共生」、「栄養と食文化」、「消費と変わりゆく社会」、「家庭と環境」が教授学習内容として包括されており、実際の授業ではたとえば「栄養と食文化」は調理実習などを通して学習する機会が多いことが明らかとなった。また、イギリスに関しては、資格・カリキュラム当局(QCA)によるGCSE試験の家庭科の試験基準と試験委員会発行の試験詳述書を分析した。その結果、「家庭科」は、「家庭科一般」、「子どもの成長」、「食物と栄養」、「被服」などから構成されて、選択して学習することなどが明らかとなった。【臨床的・実証的アプローチによる研究】この研究では、キャリア教育を導入した中学校家庭科の授業実践を実施した。ここでは、キャリア教育を定義し、学びの構造化をデザインして学習目標を設定した。そして、授業実践をして子どもの変容を考察した結果、中学校家庭科の授業にキャリア教育の導入が有効であるという示唆を得た。また、中学校家庭科教師のうち教職経験20年以上の熟練教師3名と10年未満の若手教師3名に、家庭科の授業を想定した教材化の知識に関する半構造的面接調査を実施した。その結果、両者の教材に対する考え方の違いが明らかとなった。
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