本年度は、諸外国の家庭科教育の分析と実証的・臨床的研究の分析を行った。 【諸外国の家庭科教育の分析】イギリスにおける家庭科の本質、とりわけ、定義(包括する教育内容や領域、教科あるいは科目など)と目的・目標について、歴史的な視座から分析した。これらの結果を踏まえ、カリキュラム・ポリティックスの視座から家庭科の教科としての本質について総合的に考察した。その結果、イギリスの家庭科教育は、19世紀の中頃から歴史的には多様な定義がなされてきたこと、近年では、家庭科の本質的な定義と他教科、とりわけテクノロジーとの関係が焦眉の点となっていること、女子のための教科としての目的・目標論から、男子も女子も学ぶ一般教育としての目的・目標論に変容してきたこと、こうした教科の本質がカリキュラムの位置づけに大きく関わっていたこと、などを明らかした。 【実証的・臨床的研究の分析】本年度は、前年度に中学校2年生を対象として構想し実践した、家族の学習を中心として保育、ジェンダー及びキャリア教育を包括する授業について、分析検討し改善を行い授業実践した。その結果、生徒は家族・ジェンダー・キャリア教育といった社会的事象に興味を持つようになり、自分らしく主体的な生き方を考え始めるきっかけとなった。この他に、新しい学習指導要領(家庭科編)について、初等中等家庭科教育の教材の一貫性と連続性に関する視座から分析し、教材のスコープとシークエンスを考慮した学びの構造に基づく小学校家庭科の授業構想を明らかにした。
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