研究概要 |
数学教育における直観幾何と論証幾何の接続に関して,本年度,カリキュラムの接続に伴う不整合に関する考察と,学習活動の接続に伴う不整合に関する考察の2点に取り組み,次の成果を得た。 ●中学校数学の論証幾何カリキュラムにおける「証明」の定義に関する不整合の特定 我が国の中学校数学の教科書のうち,5種類では,証明の定義における根拠の規定と,根拠の集まりとは相互に一貫していない。そして,残り1種類では,一貫性の有無が不明である。相互一貫性の欠如の一因として,同一の命題に対して正しさに関する異なる基準(子どもの知り得る事実との対応/何らかの前提からの演繹)が中学校第2学年の図形領域とそれ以前(小学校図形領域を含む)とで使い分けられていることがある。 ●中学校数学の論証幾何における諸活動の分類枠組みの設定 中学校数学の論証幾何において証明の学習活動に着目する必要がある。特に証明の学習活動に関する実践的な諸研究を長期的な視点から調えるために,証明のしくみや意義・役割等の諸特性が反映されるとともに,子供の学習として一定の方向性が明示された枠組みが必要である。そこで,中学校数学における証明の学習活動の構成要素として,証明のしくみと機能(学びの対象),子供の営み(学びの方法)に着目し,それぞれの構成要素に中学校数学として必要な範疇を設定した。その上で,証明の学習活動の構成要素の関係について考察し,中学校数学における証明の学習活動を分類するための枠組みを設定した。
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