研究概要 |
本年度は,自然科学におけるモデリングプロセスを学校教育に導入することに関する考察と,モデリングの評価に関する基礎的な考察に取り組み,次の成果を得た。 ● モデリングプロセスにおける「定型化」を学校教育に導入することに関する考察 自然科学におけるモデリングプロセスには,現実世界からモデルを構築するプロセスとして「定型化」がある。このプロセスはモデリングプロセスの第一歩であり,プロセス全体の基幹を成すものである。学校教育で児童・生徒がモデリングに取り組むことができるようにするため,「定型化」を次の諸相に分化した:事象の混沌とした状態を観察し,全体の傾向や特徴をつかむ段階,条件を設定することの必要性を理解する段階,条件を設定し,変数や変数間の関係について理想化・単純化,捨象・近似を行う段階,事象を目的に合った問題場面に作りかえる段階。 ●モデリングの評価に関する基礎的な考察 平成19年度全国学力・学習状況調査の中学校「数学B」における,モデリングにかかわる問題(「問題解決の構想と結果の振り返り(サッカー大会)」,「事象の数学的な解釈と問題解決の方法(水温の変化)」)の趣旨及び構成,解答類型の構成,調査結果における類型ごとの生徒の反応率を考察した。その結果,モデリングの評価を少なくとも次の3点から行う必要があることが示唆された:構築されたモデルの評価,モデルの構築の仕方を説明する能力の評価,モデルの構築の理由やよさを説明する能力の評価。
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