本研究の目的は、中学生が岩石と鉱物の違いを理解できる授業方法を開発することである。本年度の研究経過と成果は以下の通りである。 学習者の多くが岩石と鉱物を正しく区別できないのはなぜなのか.その原因を解明するために、大阪教育大学附属池田中学校の1年生を対象に、岩石および鉱物の概念理解に関する調査を「岩石名調査」「コンセプトマップ調査」「アンケート調査」により行った。調査の結果、学習者が岩石と鉱物を区別できないでいる原因のひとつが、「岩石と鉱物の"用語の構造関係"を岩石と鉱物の"物質的な構造関係"と同じものと理解してしまっているため(用語の構造理解の物質の構造理解への同一化)」であることが明らかとなった。 これまでの岩石と鉱物の授業は、岩石と鉱物の物質的な構造のみを扱っており、岩石と鉱物の用語の構造については触れていない。このために学習者は、用語としての岩石と鉱物の関係(包含関係にはなく、全く別個のもの)を物質としての岩石と鉱物の包含関係(鉱物は岩石に含まれるという関係)と同じものと考えてしまっていた。そこで、学習者は、岩石に属する物質の名前(例えば、花崗岩)と鉱物に属する名前(例えば、石英)の区別ができているにもかかわらず、物質的に鉱物(石英)は岩石(花崗岩)に含まれるのだから、用語としての鉱物(石英)も岩石に含まれる、岩石の一種であると考えてしまっていたのである。 この調査結果から、岩石と鉱物の学習にあっては、それらの物質的な構造の学習の後、あらためて、岩石と鉱物の用語としての構造を提示すること、「物質的には鉱物は岩石に含まれるが、用語としての鉱物と岩石は全く相容れないものであること」、「石英は物質としては花崗岩に含まれるが、石英はあくまでも鉱物の一種であって、岩石ではないこと」をしっかりと確認させることが肝要であることが示された。
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