研究概要 |
本研究の目的は、中学生が岩石と鉱物の違いを理解できる授業方法を開発することである。本年度の研究経過と成果は以下の通りである。 これまでの調査から,教員養成系の大学生の多く(少なくとも4割の学生)は岩石と鉱物の違いを正しく理解しておらず,その状況がこの20年間改善されていないことが明らかとなっている。彼らは小学校高学年〜中学校で岩石と鉱物を学習しているにもかかわらず,彼らの多くが岩石と鉱物を混同している。大学生の多くが岩石と鉱物を混同していることの原因として,彼らの頭の中にある「石」という日常概念が「岩石・鉱物」という科学概念の学習の妨げとなっているということが考えられる。 そこで,本研究では,「学習者の多くが岩石と鉱物を正しく区別できないのは石という日常概念が学習の妨げとなっているためである」という仮説を検証した。この仮説が正しいとするならば,学習者に岩石・鉱物という科学用語と石という日常用語の違いに関する授業を提供すれば,岩石と鉱物が正しく区別できるようになるはずである。そこで,石の学習を含めた2つの授業を開発し,それらの授業の効果を調べた。ひとつは石と岩石の違いの学習を含む授業(実験授業A),もうひとつは石と岩石の違いの学習に加えて,宝石の学習を組み込んだ授業である(実験授業B)。中学1年生112名を3つのグループに分け,統制群には通常の授業を,実験群Aには実験授業Aを,実験群Bには実験授業Bを行い,授業後における岩石・鉱物の理解度を比較した。 その結果,統制群と実験群Aおよび実験群Bとに有意な差は認められず,仮説の検証には至らなかった。その一方で,生徒たちは石や宝石の学習に高い関心を持って取り組んでおり,石や宝石の学習の導入を別の視点から検討する必要のあることが分かった。
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