研究概要 |
本年度は,前年に引き続き,英・米の評価の潮流として注目されるAuthentic Assessment概念を,日本の現実の学校現場で,どのようなものとして適用できるかを探った。まず,パフォーマンス課題を学んだ知識や技能を活用して,現実の生活場面に応用できる表現物を課すものと捉えた。Jay McTighe, Grant Wiggins,『Understanding by Design』を手がかりに,実践への応用を探った。西岡加名恵(京都大学大学院助教授)氏が指導する京都市立衣笠中学校を訪問し,授業観察を行った。また,Intel (R) Teach to the Futureプログラムが,『Understanding by Design』の考え方を取り入れた単元ポートフォリオの作成を具体的に可能にしていることに注目し,教育学部2年生50名を対象に実践授業を行った。成果は,「思考支援型単元プラン作成による授業設計力の育成」『教科教育学論集』No6,大阪教育大学教科教育学研究会に発表した。学習者の理解を深める本質的な問いの作成が単元プランやカリキュラムをつくる上で,重要であることを示した。 また,「社会科目標準拠評価におけるモデレーションによる妥当性・信頼性の確保」『大阪教育大学教育学研究』第5号も発表した。資料収集,調査研究としては,12月にアメリカ合衆国ワシントンで開催されたNCSS(全米社会科教育協議会)に参加した。アメリカで使用されている教科書及び教師用教材,学習資料を多数入手した。国内においては,昨年に引き続き,棚橋健治(広島大学大学院教授)氏から評価研究の基礎理論を直接,教授していただいた。7月には鳥取県教育委員会主催の社会科教員研修会で,思考力育成の評価についての研修指導を行った。全国社会科教育学会第55回全国研究大会(福井大学,10.29)課題研究では,「問題解決プロセスにおける推論技能の明示化」を口頭発表した。次年度は,本研究の最終年度にあたり,目標と評価の一体化,教材,授業と評価の整合性に焦点をあて,従来の社会科固有の学力モデルとは異なる学力モデルの提出と,社会科学習評価の方法論研究に着手したい。
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