本研究は、日本の伝統的文化(和文化)の価値を生かした教育改革を目指して、学校現場で実践可能な日本の伝統的文化に関する教材を開発し、実証的検討を試みるものである。特に、日本の代表的な伝統的身体文化の一つである日本舞踊の身体技法を視点として、検討を試みるものである。具体的には、昨年度の文献的検討を踏まえ、本年度は、その日本の伝統的文化の身体技法である身体的プロダクトとしての動作に関して、測定し・分析することにより動作学的に検討を行った。 具体的な身体文化として、和文化に共通する「足の運び」、特に日本舞踊で顕著な「摺り足による歩き」の動作等を「身体技法」として取り上げた。「動作解析三次元用バージョンアップシステム一式」を用いて、それらの動作について、家元高弟の熟練者を対象として、動作情報収集を行い分析した。具体的な動作情報の収集と分析の方法は、次の通りである。 動作映像記録等: 日本舞踊の「(男)歩き」動作のフォーム観察のため、被験者の計測部位にマークをつけ、デジタルビデオカメラで、被験者の背面と側面より撮影・録画し、ビデオシンクロナイザーによりビデオ画像のフレーム毎の動作をスーパーインポーズして記録した。さらに、「動作解析三次元用システム」を活用して、そのプログラムにより、計測部位などによるスティックピクチャーをはじめとして、重心位置、関節角度や速度などの動作分析を行い、動作学的に明らかにした。 その結果、特に、関節角度に特徴的な傾向が認められた。具体的には、膝関節の角度、スティックピクチャーにより、他の身体部位はほとんど動かさずに、膝の屈曲という「腰を入れる」動作により、すり足動作を行い、重心を低く保って、歩行している様子が明らかになった。このことは、和文化の求道者(日本舞踊名取)である本研究者の体験的な省察を交えても、特徴的な「足の運び」と考察された。
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