本年度は、音楽表現の評価観点を考察する上で基礎となる、音声サンプルの採取及び音盤のデジタル化について、基礎的資料の作成を以下の通り行った。 1、従来のデジタル記録とハイビジョン記録により、変声前より継続して採取している5名の男児について、変声後の音声サンプルを採取した。 (1)被験者の声域調査を兼ね、発声が可能な全音域について、母音/a/のサンプルで採取した。 (2)換声点の特定とその推移を判定するために、母音/a/・母音/i/によるポルタメント音を採取した。これは倍音構造の変化区間が、換声点特定の評価観点となり得る仮説を検証するための基礎データの採取である。 (3)変声時期を特定する基礎データとして、3音高5母音を採取した。特にC4付近の音高の変化が、変声期を特定する観点になり得ることを検証するための基礎データであり、変声前後の声質変化の特徴を音響解析の視点から考察する基礎資料となる。 2、実際の音楽表現について考察するために音楽表現のデジタル化が不可欠である。そのため、ベルカント唱法を中心としたアナログ盤についてデジタル化を行った。ここでデジタル化されたデータは、熟達者と初心者の音楽表現の相違、また初心者が熟達する過程の変化等を考察する基礎資料となる。 3、上記の基礎データについて2種類のDiscを作成した。 (1)原録音及びデジタル化録音のDiscを作成。 (2)音響解析用変換データのDiscを作成。
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