音楽表現における巧拙は、息の流れ・ゆらぎに着目することで観点が見いだせると考え、熟達者と初心者の波形分析結果を考察することで、観点を見いだした。なお、熟達者と初心者の音楽表現の巧拙については、歌唱表現の波形・ソナグラム・フォルマントの視点から波形分析を行い、巧拙の観点を求めた。主な観点は以下の7点である。 1.開始音0.3秒時点の波形に、ゆらぎが生じていることで熟達度が判る。2.初心者は、開始音0.5秒以上を要しても、ゆらぎを生み出せない。3.高音域からの歌唱や跳躍旋律の歌唱では、少しずつ高次倍音を含ませ発声できることで、熟達度が判る。4.熟達者は音高変化に対し、常に安定したフォルマントを保持できる。5.音高変化に対し初心者は、ビブラートがかかるなど音程(ピッチ)が不安定に推移するが、熟達者は円滑な推移を示す。6.熟達者は開始音0.3秒で、音程(ピッチ)が安定するが、初心者は安定するまでに0.6秒以上を要する。7.音高推移において熟達者は音量変化を伴わない表現が出来る。初心者は音高変化に伴い音量も変化する。 その他に、これらの解析結果を声楽指導に直接用いた授業を行った。また、音声標本のデジタル化を行い、過去のアナログ音盤のデジタル化を行い、指導上の基礎資料作成を行った。
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