研究課題
基盤研究(C)
本研究は、入門期の言語発達を、(1)コミュニケーション(話すこと・書くこと両面)の形成と(2)説明的文章の学習指導における論理的思考力の発達に絞って、主に社会文化的アプローチから明らかにすることを目的とした。究の方法としては、複合的な研究方法を取り入れた。まず、国語科教育における歴史的遺産である生活綴り方教師の土田茂範、三上敏夫、小西健二郎、戸田唯己らの授業記録をもとに入門期の学習指導原理を究明する研究を進めた。次に、臨床的研究方法によって、熊本市立本荘小学校の橋本須美子教諭の教室への4年間の参与観察を通して明らかになった談話分析やプロトコル分析の量的分析、質的分析を通してコミュニケーションの形成過程を明らかにした。さらに、現場実践者との共同研究を通して、入門期の説明的文章の学習指導の単元構成、授業過程・方法の提案を行った。本研究成果の学術的意義は以下の点である。(1)入門期の国語科教育を歴史的視点と臨床的視点に基づいて改善しようとしている点。(2)実践科学として実験授業とその検証に基づく新規の学習原理、単元の提案を行ったこと。国内外の関連する研究の中での本研究の位置づけを次のように捉えることができる。国内では、入門期の国語科学習指導を貫く指導原理を社会文化的アプローチの観点から提案する先行研究はまだ見当たらない。ましてや、説明的文章の授業について、実験授業を通して単乖構成(カリキュラム編成)まで提案しているものは皆無である。また、国外においても、社会文化的アプローチのもとで学習者の言語発達に関する要因を見出そうという動きは今日的なものになっているが、そのことを入門期に限定して、その社会文化的要因を探ろうとする実践科』学的研究は見当たらない
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