研究概要 |
『質的研究』では,授業という文脈を重視した研究を行うことになる。また,子ども個人の内面に着目し,図形概念の認識過程を重視した現象学的研究を行うことになる。今年度は,特に教科書を中心とした図形概念の授業展開における子どもの図形認識過程に焦点を当て,授業構成原理について探究した。 「直観的側面に着目した図形授業過程の研究」では,図の見方や図形のイメージの機能などの直観的側面に着目して図形概念の認識過程を探究した。図形指導において,言語的表現を用いた論理的側面の重要性は一般に認識されているが,図の機能や,図によって形成されるイメージの働きについては深く認識されていない。本研究では,子どもの図形認識において直観的側面も同様に重要であることを論ずるとともに,直観的側面に着目した図形授業過程についても論じた。 まず図形概念の理解の『様相モデル』を提示し,イメージ的表象と言語的表象の関連性により,子どもの図形概念の二面性を特徴づけた。図形概念のイメージ的表象が図形指導の直観的側面に,言語的表象が論理的側面にそれぞれ対応している認識である。 次に,直観的側面であるイメージの機能に着目し,『イメージ化の過程』に基づいてイメージの変容過程を捉えた。また,『理念性と客観性の認識過程』に基づいて,授業における直観的側面の変容過程を捉えた。そして特に,イメージ構成過程および理念化の過程が,直観的側面の指導において重要であることを論じた。 最後に,直観的側面と論理的側面を融合させた『指導モデル』を設定した。そして,小学校第5学年の垂直の指導を事例として,教科書を中心とした図形授業過程を指導モデルに基づいて検討し,確かな図形概念を育成するためには,直観的側面にこれまで以上に意識を向けた図形指導を展開する必要があることを論じた。
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