研究概要 |
『質的研究』では,授業という文脈を重視した指導過程の研究を行う。また,子ども個人の内面の変容に着目し,図形概念の認識過程を解明するための現象学的研究を行う。今年度は,特に授業構成のための教材研究のあり方の検討や,図形指導過程のモデルの構築に焦点を当て,授業構成原理について探究した。 「算数・数学授業改善のための教材開発ワークショップ」では,教材の捉え方や教材開発の目的・意義の捉え方を,局所的な捉え方から大局的な捉え方までの7つに分類した(教具開発,問題開発,基礎教材開発,発展教材開発,育成教材開発,カリキュラム開発,数学観開発)。そして,面白い教材(問題)の開発と,新しい授業展開の開発を結びつけた教材開発を目指すためには,積極的に新しい問題を作成すること,学習場や環境設定により導入を工夫すること,活動を効果的に活用すること,展開場面において数学の本質を追求すること,などが重要であることを論じた。 「図形概念に関する認識論的研究-図形指導の原理を求めて-」は,図形概念や回形指導に関するこれまでの研究を整理統合して作成した学位:論文である。回形指導を改善するために,図形概念に開する認識論的研究を行い,回形指導の原理を構築すること目的としている。 図形概念に関する認識論的研究では,教材,子ども,教師という授業構成の三要素それぞれに対応した数学的研究,心理学的研究,教授学的研究を行った。教材間と自動・生徒間を踏まえて教師の指導官を考えるという授業構成過程に対応させることで,図形概念の指導過程を見通す原理の構築を図った。そして,これらの認識論的研究の成果を踏まえて,確かな図形概念を育成するための図形指導の原理を構築し,『指導モデル』を設定した。 個人的図形概念から数学的図形概念への変容,図形概念のイメージ化から言語化への指導,図形概念の指導にともなう図形感覚の育成,理解の様相モデルに基づく図形概念の認識過程の規範化という4つの指導原理は,子どもの図形認識の「質的研究」により,図形授業過程を精緻化するための指針ともなる原理である。
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