研究概要 |
本研究では,人間的尊厳理解の一側面として、高校生が認知する高齢者の役割に着目した。 まず、沖縄の高校生が認知する高齢者役割尺度の作成を行った。その結果,沖縄の高校生が認知する高齢者役割は「人生展望」、「情緒的援助」,「しつけ・社会化」,「文化伝承」の4つの因子で説明する事ができた。 役側認知得点に影響を与える項目を検討するために高齢者役割尺度の各下位得点についてt検定を行った。性別,出生順位,高齢者との同居,高齢者に関する学習経験のうち,高齢者の役割認知差が大きかったのは,高齢者に関する学習経験の有無であった。特に高齢者と直接触れ合う授業において得点が高くなっていた。高校生の高齢者役割認識の得点を上げる具体的学習要因は,「地域の高齢者と交流」「施設の高齢者と交流」「高齢者へのインタビュー」であった。家庭科教育における高齢者との交流プログラムは生徒の高齢者理解に非常に効果的であった。 今後の家庭科の授業においては,高校生の認知する高齢者役割を視野に入れたカリキュラムが検討されるべきであり,直接高齢者と交流する授業がこれまで以上に推進される必要がある。 また,本被調査者においては,高齢者との同居は17%に過ぎず,学校教育において高齢者と直接交流する意図的場面設定が必要である事が示唆される。これまでの家庭科での取り組みが評価され,家庭科教育の役割が再認識できると同時に,授業時間数(単位数)の確保や交流の生徒引率に関わる物理的条件整備が進められる事が望まれた。
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