ものが豊かな時代における、子どものための玩具づくりワークショップ方法論を研究テーマとした最終年度は、前年度に明確にした視点に基づいた実践を4回実施し、参加幼児・児童らを対象にアンケート調査を実施し、前年度の考察を裏付ける次のような結論を確認した。玩具の構造部分はあらかじめ設定し、子どもの創造的部分は分けて設定する方法論として次のように実践すると大きな教育効果が得られる。1、自然科学的な秩序を内包する玩具テーマを設定し、紙と鉛筆で完成イメージを絵に表現させて活動を開始する。2、子どもが、玩具の動く原理を理解可能なように、道具使用方法も指導しながらゆっくり作業を進める。3、後半に、子どものイメージを広げる、様々な形状の木材や種々の素材による造形遊び的な工作を設定することにより、子ども一人一人が満足する個性的な仕上げを引き出せる。以上の方法により、短時間で完結する玩具づくりワークショップにおいても、最大限の教育効果を引き出せると考えられる。今後、教育現場では、学習指導要領の改訂により、図工の時間は現状が維持されるが、総合的な学習の時間と関連させた方法による、ものづくり実践は減少することが予測され、学校外でのものづくりワークショップの意義は今後更に大きくなると予想される。また玩具デザインの展開研究では、自然の秩序生をデザインコンセプトとした玩具作品を7回の展覧会に出品した。この活動は、子どもの玩具づくりワークショップのテーマを創案する上で相補的な重要な活動になった。これらの中から、錯視の要素を持つ「坂を上る回転立体」について、原理から遊びまでを論文にまとめた。また、自然の要素の風や空気をコンセプトとした、空気膜構造体の遊具については、本研究テーマに合致する視点でまとめ、2007・2008年4月に、こども環境学会・ポスターセッションにて発表した。
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