研究課題
日本のアニメーションは質・量ともに国際的に知られている。宮崎駿監督による「千と千尋の神隠し」は2002年にアニメーションとして初めて金熊賞を受賞した。今年度の研究では宮崎駿監督の出世作となった1979年制作「カリオストロの城」(色彩設定:近藤浩子)を取り上げて、その色彩について論じる。日本のアニメーションにおける色指定方法は、実写の映画より美しく印象深い場合がある。それは現実世界に見られる無限の色の点からヒトの脳の記憶に適応した色を選び出して色面構成され、色指定されているからである。研究方法「カリオストロの城」から二つのシーンを取り出して測色した。一つは月明かりの下のシーン、もう一つは蛍光灯の下のシーンである。おのおののシーンから色刺激として8つの指標を選んだ。月明かりの下のシーンからD1〜D8を選び、蛍光灯の下のシーンの同じ箇所をL1〜L8とした。また、月明かりのシーンから国旗のシーンを取り出し、指標をDa〜Djとした。本来はフィルムスクリーンから直接計測すべきであるが、今回はプレスタートとしてTVスクリーンから直接計測した。計測に用いたのはミノルタ製放射輝度計CS-1000である。研究結果芸術は現実の再現にとどまるものではない。心象を現実に加えて表現されるべきものであり、その例を日本のアニメーションの色彩設計に見ることができる。ここでは、1.白いシャツの色のみが月明かりの下での現実的な色再現をしている。2.肌の色は蛍光灯の下でも月明かりの下でも恒常性を保っている。3.赤褐色の髪の色と赤いネクタイは月光下では青みを強調されて色表現され、月光下では暗くみえるはずが明るく表現されている。4.国旗の色は記憶色に一致している。という4つの点に芸術の虚構性を見ることができた。
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EI2006 Internet Imaging, Color Imaging XI : Processing, Hardcopy, and Application SPIE Vol.6058-12
ページ: 6058C-1-8
カラーフォーラムJAPAN2005論文集 2005
ページ: 105-108