顕著な読み書き障害を示した2事例に対して、50音表の活用と単語と呼称の対連合学習を用いた指導を実施し、指導期間中の絵・単語シートの読み時間の変化および指導前・指導後の文字・有意味語・無意味語・イラストのリストの読み速度の変化を調査した。1事例では、指導とともに一文字・有意味語・無意味語・イラストともに読み速度が上昇した。他方の事例では、単語の読み速度の上昇は顕著ではなく、文字・単語・イラストのリスト読みの速度の変化は認められなかった。これらの事例について他の認知的検査の結果に基づき分析を行った。さらに視覚に顕著な認知的偏りをもつ書き障害の事例について、その認知的特性とその書字の特性について分析中である。 漢字の読み書きに顕著な困難を示した青年の事例について過去10年間のデータを整理し、保護者および本人に聞き取り調査および再検査を実施し分析を行った。 自発的に研究協力を申し出た発達障害の児童生徒に対して、読み速度・音韻分解などの音韻操作課題およびReyの複雑図形の記憶などの視覚認知課題を実施中である。 さらに、英語の読み書きに困難を抱える発達障害の児童生徒に対して、Phonics指導を行い、その効果を調査した。知的に大きなおくれが認められない場合、単語の読みの正確さと読み速度には顕著な改善がみとめられることが明らかとなったが、読み→意味想起やスペリングの改善は顕著ではなかった。また、その認知的特徴と読みの困難さの特徴との関係について分析中である。また、非発達障害(健常)群に対してもPhonics指導を実施しており、その結果にもとづいて発達障害群と読み書きの特性について比較検討する予定である。
|