研究概要 |
平成17年度は情動の評価が困難な重症心身障害児(者)に対し,生理的指標特に唾液アミラーゼ活性値の変化を用いて客観的にそれをとらえ,医療行為などのdistress(不快なストレス)源にフィードバックすることができるかを検証することが目的であった。本研究の結果、以下の5点を明らかにすることができた。1、重症心身障害児(者)の医療的処置(胃チューブおよび気管カニューレ交換)に伴う急性distressに際し、唾液アミラーゼ活性値の有意な上昇がみられる。2、急性distress時の唾液アミラーゼ活性値は心拍数と相関し、交感神経系の亢進に大きく影響されている。3、重症心身障害児(者)の唾液アミラーゼ活性値は急性distressの強さの違いを反映する。4、同じ大島分類1の重症心身障害児(者)において、急性distressに対する反応性に差異が認められる場合がある。5、テストストリップ式携帯型唾液アミラーゼ活性測定器は、重症心身障害児(者)における急性distressなどに伴う情動の評価において、非侵襲的であり、感度(sensitivity)、特異度(specificity)ともに優れた方法であり、重症心身障害児(者)のQOLの向上に寄与する可能性が認められる。 本人から表出される情報が極めて少ない重度の障害児(者)の心的状態の評価において,本研究で得られた結果は療育や教育の評価および医療管理等における活用が期待でき、それらの人々のQOLの向上に資するものと考えられた。
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