研究概要 |
平成18年度は情動の評価が困難な重症心身降害児(者)に対し、生理的指標、特に唾液アミラーゼ活性値の変化を用いて客観的にそれをとらえ、不快なストレス軽減を目的とした「スヌーズレン」などに代表される療育活動に際する、重症児(者)にとっての快適なストレスであるeustressの評価を客観的に行うことの可能性および有用性を検証することを目的とした。本研究の結果、以下の5点を明らかにすることができた。1.重症心身障害児(者)のスヌーズレンにおける唾液アミラーゼ活性値は、スヌーズレン試行中に有意に低値を示した。また、スヌーズレンを介した唾液アミラーゼ活性値の変動は、スヌーズレン開始前からスヌーズレン試行中において低下し、スヌーズレン終了後には、スヌーズレン開始前の唾液アミラーゼ活性値に近い値まで上昇するという変動パターンであった。2.重症心身障害児(者)めスヌーズレンにおける心拍数は、スヌーズレン試行中に有意に低値を示していた。スヌーズレンを介した心拍数の変動は、唾液アミラーゼ活性値の変動パターンと類似しており、スヌーズレン開始前からスヌーズレン試行中において心拍数は低下し、スヌーズレン終了後には、スヌーズレン開始前の心拍数まで戻るという変動パターンであった。3.スヌーズレンを介した唾液アミラーゼ活性値の変化率の方が、心拍数の変化率よりも大きかった。4.スヌーズレン揚面において、唾液アミラーゼ活性値が重症心身障害児(者)のeustress状態を反映していた。5.スヌーズレンというeustressを惹起させる介入の効果が、生理的指標である唾液アミラーゼ活性値の変動により反映されることが実証された。本人から表出される情報が極めて少ない重度の障害児(者)の心的状態の評価において,本研究で得られた結果は療育や教育の現揚において、その介入効果を評価する上での有用性が期待でき、その応用は重症心身障害児(者)のQOLの向上に資するものと考えられた。
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