本年度は、「担任教師の学級経営に対する行動支援プログラムに関する研究」ならび「行動障害を有するADHD児童への校内支援体制の構築に関する研究」を中心に実施した。学級経営に対する行動支援プログラムとしては、「宿題の提出」および「掃除」を標的行動として、相互依存型集団随伴性の適用効果について検討した。相互依存型集団随伴性とは、学級の構成員全体のパフォーマンスが、学級全体の強化基準になる随伴性手続きである。具体的には、「宿題提出者が学級全体の90%以上であった場合に、給食時の席順を生徒が自由に決めることができる」などの手続きが用いられた。宿題の提出については1学級、掃除に関しては2学級に適応した結果、この随伴性手続きの適用が、標的行動の改善に有効に作用することが明らかになった。また、手続きの導入に伴い、児童間において肯定的な社会的相互作用が観察されるようになった。具体的には、他児童に対して標的行動の生起を促したり、あるいは標的行動の生起を賞賛するような言語的相互作用が観察された。これらの結果については、教師の学級経営の技能との関係で考察された。 第二の研究は、顕著な攻撃行動と授業妨害を示すADHDの児童に対する校内支援体制の構築とその効果について検討した。校長・教頭・教務主任・養護教諭・特殊学級担当教師・担任教師と大学スタッフにより支援チームが構成された。この支援チームが、対象児童の攻撃行動と授業妨害行動に対する支援計画を立案した。立案された支援計画が実行された結果、標的行動は速やかに減少した。これらの結果の基づき、行動問題の対応における校内支援体制の重要性について考察された。
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