本研究は、通常の学校に在籍している発達障害のある児童が、行動障害を示したときの対応方法について、応用行動分析学に基づいて検討することを目的とした。その際に、米国内において、近年、注目されている積極的行動支援を参考にして、研究を実施した。研究1では、注意欠陥・多動性障害の児童を例にして、積極的行動支援の核となる「機能的行動アセスメントとそれに基づく支援」について概説した。特に、行動障害そのものに焦点をあてるのではなく、機能的行動アセスメントに基づいて、行動障害と機能的に等価な代替行動の選定、ならびに行動障害が生起している場面で最も望ましいと考えられる適切行動を同定し、それらの行動を支援する方法の有効性について概説した。研究2では、行動障害を示す児童個人に対する支援方法について、事例的に検討した。具体的には、授業中に離席をする、床に寝転ぶなどの行動問題を示すアスペルガー障害の児童を対象として機能的行動アセスメントを実施し、その結果に基づいて支援計画を立案した。行動問題の減少への支援プログラムの効果について検討した。研究3では、注意欠陥・多動性障害の児童の学級内での「けんか」に対して、対象児童への支援を目的として、学級全体へと介入する支援計画を立案し、その効果について検討した。その結果、対象となる児童のみを支援するだけでは十分ではなく、相手となる学級内の友だちも含む支援計画の立案が重要であることが示された。研究4と5では、通常の学級に在籍するすべての児童を対象として、適切な行動を増加させることを目的とした支援プログラムの効果について検討した。その際には、学級全員の標的行動に関する遂行状況が、すべての児童に対する随伴操作を決定する「集団随伴性」と呼ばれる手続きを中心として支援プログラムを組み立てることで、学級全体の標的行動の増加に成果が示されることが明らかになった。
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