本年度は、将来感情理解プログラム・パッケージに発展させていくための学習内容の1つとして、種々の感情を表現した音声刺激の作製を行うことに重点を置き、本研究のベースとなる学習プログラムに、それを組み込むことを目的として研究を進めていく予定であった。しかし、来年度より開始される特別支援教育制度に対応した、大学における新教育課程編成の主担当者になったため、急務である本作業に昨夏より大幅に時間をとられ、研究に十分な時間をさくことが事実上困難であった。 しかしながら、本年3月には、広島産業振興機構(広島TLO)の仲介で、ソフトウェア開発企業への技術移転を行うことができ、実用化を目指した表情理解学習ソフトの開発が来年度より本格的に開始される予定である。この開発を通じて、音声、身振り、感情を喚起する状況の理解課題など、表情以外の学習内容も将来的に付加していけるような、より汎用性、発展性の高い表情学習プログラムを作成していけたらと考えている。また、表情理解学習プログラムの改良に関するアイディアも本年度考案することができ、今後さらに具体化して、将来の新たな特許申請などにつなげていけたらと計画している。 さらに、今年度は、表情以外の学習課題に関する準備として、先ず音声課題の素材を収集するために、大学演劇部の学生4名に依頼して、表情と口調で、喜び、悲しみ、怒り、嫌悪、驚きの感情を各2〜3段階程度の強さで表出してもらい、それをビデオに録画した。使用した言葉は、入手した文献資料より決定した、「おはようございます」、「こんにちは」、「さようなら」、「さあ、いきましょう」、「今日はいい天気ですね」の5つである。上記のような事情によって、予定より遅れているが、これらを編集し、大学生による感情カテゴリーの一致率や感情強度の評定を行い、学習プログラムに用いる音声を選択していく作業を今後行っていく予定である。
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