本年度は、将来感情理解プログラム・パッケージに組み込むために、前年度に収録した演劇部学生による、音声での感情表現のビデオを編集し、感情カテゴリーの一致率や感情強度の評定を行って、課題として使用する項目を決定し、音声の学習素材を完成させる予定であった。また、身振りによる感情表現に関しても、同様の作業を進めるつもりであった。しかしながら、学生の研究指導等に予想以上の時間を取られたこともあり、これらの学習素材の作成作業は、現在も進行中である。後述の学習プログラムが実用段階に達するまでには、その作業を終え、プログラムに組み込んでいきたいと考えている。 一方、感情喚起状況の理解課題については、近年、発達障害児・者に対して、対人場面での基本的なルールなどを教えていく、社会的スキル学習の重要性が増してきていることから、課題内容を変更して、高校生や青年を想定し、教室場面等での望ましい言動と望ましくない言動をペアにして、演劇部の学生に演じてもらい、ビデオに収録した。これらのシナリオは、実際に発達障害児・者の相談・支援業務に携わっている知人が、その経験に基づいて作成したものであり、実用性は十分に高いものであると考えられる。現在、発達障害者支援センター等の2施設で、発達障害児・者を対象に、このビデオを使った学習を行っており、その結果などを参考にして、学習プログラムに組み込む際の、適切な設問形式などを検討し、実際にプログラムに組み込んでいく予定である。 また、昨年技術移転したソフトウェア開発企業と共同で、学習プログラムの試作版の開発を進めており、現時点では、動画や誤答時のヒント提示等も可能な段階に達している。その開発過程で、新たな特許申請の準備も進めており、今後、表情、音声、社会的スキルなどの学習課題を組み込んだ、発達障害児・者のための感情・社会的スキル学習プログラムの実用化を目指していく計画である。
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