研究概要 |
手指コミュニケーションを中心とする聾学校に在籍しているA,C児と聴覚コミュニケーションを中心とする通常小学校に在籍しているB,D児(いずれも現在小1〜2年)を対象に聴取能・発語明瞭度・語彙の関連を検討した。対象児は、両群間で条件が等しくなるようにバランスをとり、4名とした。うち、A,B児は内耳形成不全であった。検査は、聴取能(CI-2004)、発音の評価、語彙検査を行った。聴取能を比較したところ、通常小学校の聴覚環境下にあるB児(内耳形成不全、使用電極数16本、装用後3年10月)は、単語80%、2語文64%、3語文72%であった。D児は、いずれも100%に近く天井効果を示していた。一方、聾学校の手指環境下にあるC児(内耳形成正常、使用電極数20本、装用後5年4ヶ月)は、単語60%、2語文66%、3語文検査不能であった。内耳形成不全のA児はさらに成績が悪かった。このように、日常的なコミュニケーションへの聴覚の関与が成績の著しい差をもたらしたものと考えられた。聴覚を意識しない場合、相手がわかる場合にはより容易な手指コミュニケーションへと移行してしまったものと考えられた。一方、手指は併用するものの、聴覚口話が主体の児童の場合、聴取能、発音、語彙のいずれも高い評価得点であった。日常的なコミュニケーションモードやコミュニケーション環境の影響が著しいことが明らかとなった。この他、人工内耳装用後1年半の幼児も観察してきた。コミュニケーション時に意図的に聴覚を利用し、音声表出を誘導しない場面(幼稚園の保育場合)などでは、音声表出が見られない手指コミュニケーションに終始していた。しかし、大学の指導場面では、音声も同時的に使用していたが、明瞭度が十分でなく状況がわからないと内容がほとんどつかめない状態であった。以上のように、意図的なコミュニケーションモードの使用が、人工内耳の使用を促進する上でも大切なことが明らかとなった。
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