研究概要 |
1,親の意識は、音反応出現後に安堵感を示し、その後、就学前までは聴覚とことばを意識していた。就学後は、聾学校の場合には手話を、通常小学校の場合には子どもの得意とするコミュニケーションを心がけているが、聴覚への意識が十分には持続できないことが多かった。教師側は、聾学校では聴覚活用の意識が十分でなく、通常小学校では聴覚的な配慮が十分ではなかった。 2,対象児の変容:(1)コミュニケーション様式の変容:通常学校に通う児の場合、聴覚口話が多いが、十分には通じないと思われる児では、手話を併用している。この場合、親も子も手話が十分でなく、簡単な日常生活程度の簡単な手話しか使用されず、コミュニケーションが不十分となるだけでなく、意味概念上の深まりが極めて浅いことがわかった。(2)聴覚情報処理上の変容:コミュニケーションモードの種類に係わらず、術後の年数と共に向上していった。音声情報処理能力は、電極の挿入具合ばかりでなく、術前の聴覚的な活用能力が大きく影響していると思われる。(3)言語能力の変容:小学校の低学年では、読字力、語彙力、文法力、読解・鑑賞力の各領域において学年相応の力を持っているが、聴覚的情報受容力が十分でない群では、読字力以外の領域の力は、学年があがるにつれて伸びが鈍くなった。(4)話しことばの変容:構音は、年数と共に改善が認められたが、聴取能力に依存するところが大きく、個人差が大きかった。また、聴取能力の向上だけでは、一部の音は歪んだり、鼻音化することも多く、発音指導が必要であった。手指コミュニケーションモードの児ほどその傾向は強かった。(5)聾学校では、体系的なリハビリプログラムがなく(93%)、病院・リハビリ施設・学校との連携したプログラムが必要と思われた。 いずれの項目も、個人差が大きく、リハビリ後の親や教師などの意識が、術後の成績に大きく関連すると思われた。
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