研究概要 |
初項を正数の組(a, b)で与え、次項を前項の算術平均と幾何平均により与えるという操作の反復により、2重数列(a_n, b_n)が得られる。このとき(a_n), (b_n)はともに収束し共通の極限をもつ。この極限はa, bの算術幾何平均と呼ばれ、楕円積分やガウスの超幾何関数で表示されることが知られている。 1881年にE. M. Goursatにより発見されたガウスの超幾何関数に対する変数変換公式を利用して、算術平均や幾何平均とは異なる2種類の平均を繰り返してとることで得られる2重数列の共通極限の表示定理を得た。 また、多変数超幾何関数のみたす変数変換公式を新しく発見した。その公式の特別な場合を平均反復で得られる多重数列の共通極限の表示に応用した。 上半空間の元τがモジュラスλの楕円曲線の2つの周期の比として与えられたとき、λを変数とする超幾何関数とτを変数とするテータ定数の間には、Jacobi公式という等式が成立する。ピカール曲線と呼ばれる種数3の代数曲線の周期を考察することにより、2変数超幾何関数と多変数データ関数により定まる複素2次元超球上の保型形式間に成立するJacobi公式に相当する関数等式を与えた。 これらの一連の研究成果はまさしくテータ関数にかかわる幾何の研究から自然に得られたものであり、平均反復に関する研究の機軸どなるものと期待される。
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