研究概要 |
この研究の中心的課題である加法的問題における例外集合の密度評価をするにあたっては,サークルメソッドを応用し,その際に現れるマイナーアーク上の積分の絶対値の2乗平均に対する評価から導く,という手法が従来の常套手段であったが,川田はブリューデルンやウーリーと共同で,2乗ではなく1乗の値を直接平均する手法を開発した.この方法により,例えば平方数などの密度の薄い集合に含まれる例外の自然数の密度に対する良い評価を与えることが可能になった. また,素数,あるいは概素数と対照される概念として,小さい素因数しかもたない自然数は滑らかな数と呼ばれるが,それに対する3乗数のワーリング問題について考察した.この問題については,8個以上の場合については既に満足すべき結果が知られていたが,川田は7個の場合について一応の成果を得,2006年4月にモントリオール大学で開かれた研究集会において報告を行った. さらに,前年度に報告した16個の4乗数の和で表せない例外の自然数の決定に関する研究を進め,15個の場合をも研究対象とした.15個の4乗数の和の場合は,その形で表せない自然数は実際に無限に存在するが,そのうち16で割り切れないものは有限個であることがわかっており,しかもそれらの16で割り切れない例外の自然数を決定すれば,16の倍数となるものをも含めて15個の4乗数の和で表せない自然数が完全に決定されることが知られている.そこで,それらの16で割り切れない例外自然数の上界について計算し,例えば10の785乗を上界として得た.例外の自然数が法16で所属する剰余類によっては,その上界は大きく改良できることなども示した.これらの一連の結果については,2006年9月にフランス・ルミニーの国際数学研究所(C.I.R.M.)で開かれた研究集会での講演で川田が発表した.
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