研究概要 |
本年度の最も主要な研究成果は,自然数をいくつかのべき乗数の和として表す方法の数に対して成立すると予想されている漸近式に付随する例外集合の研究における結果である.6個の3乗数の和による表現の場合については,任意の与えられた2次の整多項式の値集合の中における問題の例外集合の元の密度が0であることを,その漸近式の誤差項とみられる量の2乗平均を評価することによって証明した.これにより,例えば,密度0の例外を除いて,すべての平方数に対して,予想される漸近式が成立することになる.7個の3乗数の和の場合については,前記の誤差項の4乗平均まで期待通りの評価を示したほか,任意の3次整多項式の値集合に関して,対応する結果を得た.さらに,高いべき乗数の和の場合の漸近式,およびbinary Goldbach問題の場合漸近式に対しても,同様の結果を示した.以上の成果については,既に論文としてまとめ,投稿中である. また,4乗数のWaring問題に関して,15個の4乗数の和で表せない自然数から成る例外集合は,16の倍数を除けば有限集合であることを1939年にDavenportが示しているが,その有限集合の最大元の明確な上からの評価も与えた.これは本研究の初年度に得られた研究成果を受け,さらに発展させたものであり,その概要については京都大学数理解析研究所講究録に投稿しているが,発刊時期は未定となっている. さらに,素数の3乗の和で表せない自然数から成る例外集合の密度の評価について,適用する篩の方法とその重みに新たな工夫を加えることによって,それまで最良であったKumchevによる評価を上回る結果を導いた.この成果については,川田が研究代表者を務めた2007年10月の京都大学数理解析研究所における研究集会において,川田が口頭発表を行った.このアイディアによる研究は,更なる進展の余地があると思われ,今後の研究につなげていく予定である.
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