本研究の目的は、正定値偶格子から定義される格子頂点作用素代数の内部構造を詳しく解析すること、特に部分代数として現れるW代数を調べることである。部分代数としては、位数3の自己同型による固定点全体のなす部分代数、すなわちオービフォールドに注目する。出発点となるのは、通常のA_2型ルート格子を√<2>倍した格子から定義される格子頂点作用素代数の、A_2型ルート系のコクセター元から引き起こされる位数3の自己同型によるオービフォールドである。このオービフォールドには、中心電荷が4/5のW_3代数と中心電荷が6/5のW_3代数のテンソル積が含まれていることが、以前から知られていた。また、これら2つのW_3代数の既約加群の分類も完成している。平成18年度では、田辺顕一朗と共同で研究を進め、上記のオービフォールドの既約加群を分類した。既約加群の間のフュージョンルールについても、その一部を決定することができた。さらに、この成果を基に、リーチ格子から定義される格子頂点作用素代数について、位数3の自己同型によるオービフォールドの研究に着手した。このオービフォールドは、モンスター頂点作用素代数とも密接に関係する興味深い頂点作用素代数であり、平成19年度以降も継続して研究する計画である。なお、アメリカのオハイオ州立大学(2006年6月13日)、台湾の国立成功大学(2006年9月8日)、京都大学(2006年12月20日)および山形大学(2007年3月19日)で開催された研究集会ならびにセミナーにおいて、上記の研究成果を発表した。
|