格子頂点作用素代数の部分代数として、様々な頂点作用素代数が現れるが、本研究では特にオービフォールド、すなわち有限位数の自己同型による固定点全体のなす部分代数に注目した。格子の-1倍の等長変換から引き起こされる位数2の自己同型によるオービフォールドについては、すでに詳しい研究がなされている。本研究では、位数3の自己同型によるオービフォールドを考察した。最も基本的な階数2のA型ルート格子を√2倍した格子から定義される格子頂点作用素代数の、位数3の自己同型によるオービフォールドには、中心電荷4/5および6/5の2つのW代数が部分代数として含まれており、これらW代数の既約表現については、結果が共著論文として発表されている。平成19年度は、これらの成果に基づき、格子頂点作用素代数の位数3の自己同型によるオービフォールド自身の既約表現を分類した。その結果を、田辺顕一朗との共著論文としてPacificJournal of Mathematicsに発表した。これは、位数3の自己同型によるオービフォールドの既約加群を分類した最初の例である。また、研究成果に関運する内容を、ブルガリア科学アカデミー(2007年6月20日)、近畿大学(2007年6月29日)、東京大学玉原国際セミナーハウス(2007年8月14日)、東北大学(2007年9月21日)、首都大学東京(2007年12月5日)で開催された学会あるいは研究集会などで発表した。平成19年度の研究成果は、モンスター単純群とも関係することが期待されており、現在その方面からの研究を進めている。
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