2006年6月のヨーロッパ訪問に於いては、パリ南大学のイリュジー氏やエッセン大学のエノー氏と交叉コホモロジーに対するレフシェッツ公式についての議論を交わすことにより東北大学の花村氏の理論との関連が浮かび上がり、4人による共同論文に結びついた。2006年8月のシアトルでのアメリカ数学会の夏期学校では花村氏との議論を行うことにより、その理論をさらに進めることができた。これはレフシェッツ公式の局所項をデ・ヨング氏のオールタレイション上のサイクルの交叉理論を使うことにより書き表そうというものであるが、オールタレイションのコホモロジーと元の多様体の交叉コホモロジーとの関係はかなり複雑で、局所項を簡単な形で表すのは容易ではない。 シアトルの夏期学校ではその他にミシガン大学のムスタタ氏やジョンホプキンス大学のブドゥール氏との議論を行い、超平面配置の跳躍係数が組み合わせ不変量であるというムスタタ氏の予想の解決に結びつけることができた。これはブドゥール氏の理論を使うことにより、ステンブリンク氏の意味のスペクトラムが組み合わせ不変量であることを示せばよいが、帰納法を使って実際に証明するのにはかなりの技術的困難を伴う。 6月のヨーロッパ訪問に於いてはその他にニース大学のディムカ氏やメゾノーブ氏と非特性超平面切断に於けるスペクトラムの振舞についての議論を行い、それがホッジ加群の理論から自然に導かれることがわかった。これはその後ニース大学のトレリ氏を加えて4人による共著の論文に到った。
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