研究概要 |
平面分割(plane partitions)の数え上げ問題では対称性を仮定して母関数を考えることによって、たいへん興味深い積公式が得られることが多い。特にW.H.Mills, D.P.Robbins, H.Rumseyにより、1986年に出版された論文Self-complementary totally symmetric plane partitions (J.Combin.Theory Ser.A 42,(1986),277-292)にある予想は2つを除いて長い間、その解決の糸口が見出せずに来た。本研究では、まず、Pfaffianの和公式に関する出版された著者達の論文Applications of minor summation III, Plucker relations, lattice paths and Pfaffian identitiesによってPfaffianに関する多くの手法を得ることができた。また、その他にもAdv.in Appl.Math.にアクセプトされた著者らの論文Generalizations of Cauchy's determinant and Schur's Pfaffianで得られた行列式やPfaffianに関する等式は応用上も非常に大事である。これらの手法を利用して、現在totally symmetric self-complementary plane partitionの数え上げ問題に関する予想を解決に導く結果が得られつつあり、これに関する論文を執筆中である。これらに現れる行列式やPfaffianの評価には、超幾何級数やq-超幾何級数が関係していることが予想され、この評価において、それらに関する等式が得られることが期待される。しかし、これらの行列式の計算は決して容易ではない。その他にも和歌山大学の田川氏との共同研究により、d-complete posetを拡張した半順序集合が定義でき、それの(P,ω)-partitionの母関数を計算すると、ある種の積公式が得られることがわかった。この結果はSchur関数に関するCauchy typeの等式によって証明される。これらのCauchy typeの等式は、Robinson-Shensted-Knuth対応のようなbijectionによる証明が期待される。このほかにも、リヨン大学のJiang Zeng氏との共同研究により、transfer matrix methodによって得られた行列式の評価問題なども解決に至った。
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