研究概要 |
有限個の生成元と有限個の定義関係で決まる代数系(有限表示代数系)、特に、それが完備な書換えシステムで定義されている場合は、代数系上の様々な計算問題や決定問題が、アルゴリズム的に取り扱えるので、計算科学との関連からも、盛んに研究されるようになってきている。 本研究では、有限表示代数系、特に、モノイド、群と結合的代数を、書換えシステム(Groebner基底)の手法を用いて研究した。代数系が完備書換えシステムを持つための条件、および、そのホモロジー(環)との関係を調べた。 結合的代数とその両側自由加群上のGroebner基底の理論を基に、自由分解を構成し、代数のHochschildコホモロジーの計算に適用する一般論は前論文(Groebner bases on associative algebras and the Hochschild cohomolog, Trans AMS 357,2005)で展開したが、これを、pass algabra両側射影加群上の理論に一般化することも完成しており、発表予定である。この方法を一般の両側加群の射影分解の構成に適用できるよう、さらに一般化する研究も進行中である。 自由(射影)分解が得られても、それから実際にコホモロジーを計算するのが困難な場合も多い。0次元のHochschildコホモロジーはその代数の中心であるが、第1論文では、有限表示群の中心が自明性が決定不能であることを示した。さらに、群の中心が決定可能であっても、その群の群環の中心が決定できるとは限らないことも示した。その構成において、完備書換えシステムを用い、書換え理論の有効性を示した。 第2,3論文では、グラフやデザインに現れる離散構造の存在性、およびその組合せ的性質について研究の成果を発表した。 平成17年2月には京都大学数理解析研究所において、代数系の計算論に関する研究会を開催し、その成果を報告集(図書1)にまとめた。
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