平成18年度は以下の2系統の研究を行った: (1)多項式環の単項式イデアルの構造の研究、 (2)標数pの次数孤立非F-有理型特異点の局所コホモロジーの構造の研究。 単項式イデアルにはテイラー型自由分解が与えられるが、これがどのような場合に極小になるかは完全には分かっていない。そこで(1)に関する奥平との共同研究の一環として、Eliahou-Kervaire型極小自由分解が知られている線形商付イデアル(ideal with linear quotients)について、テーラー型自由分解が極小になるための必要十分条件を与え、特に安定イデアルに関しては、その生成元の形を完全に決定した。さらに、後藤との共同研究によって完全な分類が与えられた一般化された完交環(generalized complete intersection)、すなわち任意のべきI^n(n>0)がgeneralized Cohen-MacaulayになるようなStanley-Reisner型単項式イデアルについて、さらにI^nが全て線形極小自由分解を持つ場合を、奥平との共同研究により完全に決定した。 いっぽう(2)の研究として、(標数0の体上の)次数付き孤立非有理特異点から素数pによる十分一般な還元、すなわちgeneric mod p reductionで得られる孤立非F-有理型特異点が、最高次局所コホモロジーにおけるゼロの密着閉包によって制御されることに着目し、孤立非有理特異点からの還元とは限らない一般の場合を考察した。すなわち、一般の場合最高次数局所コホモロジーにおけるゼロの密着閉包の非消滅次数が、ある条件のもとでは次数が1つ低い局所コホモロジーの非消滅次数を制御することを示した。
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