研究概要 |
平成18年度は本共同研究4年間の2年目である。昨年度に試みたテーマ(1)「Macaulay化に関する川崎理論の中で重要な役割を果たす概念P-standard列との関係を明らかにして,USD列の基礎理論を解明すること」については今年度も引き続き取り組んだ。また,今年度は新たなテーマ(2)「Macaulay化に関する川崎理論の中で確立されたP-standard列から創出されたidealに付随するRees環などの次数付き環の環構造を解明すること」にも取り掛かった。 テーマ(1)については,P-standard列の基本的な性質を精査するとともに,新たな観点として,N.T.Cuong氏(Institute of Mathematics, Vietnam)が2005年に導入した「dd-列」との関連に注目し,その基本性質の研究に着手した。著しい性質としてP-standard列はdd-列である。またdd-列は定義から直ちにstrong d-列をなす事が分かるから,川崎理論の簡素化を模索する際に極めて有望な新しい観点を提供すると期待している。こうした概念を発展させ川崎理論を一望する列性質に到達できれば,Macaulay化に関する川崎理論の有効性を担保する際に重要なP-standard列の偏在性についても自ずと解明が進むものと期待する。テーマ(2)については,Macaulay化に関する川崎理論の中で確立された手法,特にRees環の環構造やその局所cohomology加群を解析する手法を精査した。技術的にはある不変量に関する数学的帰納法によるものだが,Rees環上のホモロジー代数を構築するには,そのような不変量をかなりの一般性と偏在性を伴うものとして的確に定義しなければならない。来年度は少し方向を変え,Rees環の局所cohomology加群を完全に決定することがなくても求める性質を証明する方法も模索して行きたい。また,引き続き,Hilbert係数を発展させて不変量を構築することやSally加群の巧みな性質を利用する研究手法についても更に研究を深め,論文化についても鋭意取り組み研究成果の発表も適宜行いたい。
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