研究概要 |
平成19年度は本共同研究の3年目である。本共同研究の研究成果の取りまとめを考慮しつつ,17年度及び18年度から取り掛かった研究テーマ(1)「Macaulay化に関する川崎理論の中で重要な役割を果たす概念P-standard列とめ関係を明らかにして,USD列の基礎理論を解明すること」と研究テーマ(2)「Macaulay化に関する川崎理論の中で確立されたP-standard列から創出されたidealに付随するRees環などの次数付き環の環構造を解明すること」について,研究の効率化を一層図るため,研究対象を絞り込むことにした。これまでは主に基礎環がBuchsbaum環であるとき,極大準素idealに付随するRees環や随伴次数付き環がどのような環構造を持つかを考察してきたが,今年度は,研究テーマ(1),(2)を更に深く調べるために,この逆の方向に取り組んだ。即ち,随伴次数付き環がBuchsbaum(或いはquasi-Buchsbaumなど)の時,基礎環自身にはどの程度までこの環構造が反映するのかを考察した。まず,随伴次数付き環の概念を拡張して拡大随伴次数付き加群と呼称すべきものを準備した。今,Iを極大準素idealとするとき,自然数αに対し,I^n/I^<{n+α}>をn次の斉次成分とする次数付き加群をG'α(I)とおく。equi-I-invariantの場合,基礎環がBuchsbaum(或いはquasi-Buchsbaum)であれば,G'α(I)はすべてのα>0に対して基礎環と同じ性質を持つ。そこで,この事実の逆が成立するのではないかと期待したが,残念ながらIが極大idealの場合しか現在の所証明できない。Equi-I-invariantの場合,mを極大idealとすると,もしすべてのα>0に対してG'α(m)がBuchsbaumならば,基礎環もBuchsbaumである。逆方向の問題は代数的であるにも関わらず極めて位相的側面も併せ持つ事を示すものであり,興味深い。一方,川崎理論の中で双対複体(或いはCousin複体)が果たす役割を解明しようとする研究テーマ(3)については,まだ途中で次年度でも引き続き,川崎氏の先行研究を徹底的に精査して行きたい。
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