研究概要 |
随伴次数環の概念を拡張して拡大次数加群G'α(I)-極大準素イデアルIと自然数αに対しI^n/I^{n+α}をn次斉次成分とする次数加群をG'α(I)とする-を定義し,equi-I-invariantの場合,基礎環がBuchsbaum(或いはquasi-Buchsbaum)であればG'α(I)はすべてのα>0に対して基礎環と同じ性質を持つこと,Iが極大イデアルのときはこの逆も成立することなどを昨年度までに解明した。今年度は他の性質,FLC性やProjのCohen-Macaulay性など,について考察を加え,すべてのαに対してG'α(I)がFLCであることと,2以上のあるαについてG'α(I)がFLCであることとの同値性などを解明した。更に,有限個のαに対してG'α(I)がBuchsbaumであっても基礎環は必ずしもBuchsbaumとは限らない事を示す例を,これまでは1次元の例のみが知られているので,一般次元で構成した。この拡大次数加群G'α(I)に関する研究成果は,論文「Buchsbaumness of certain generalization of the associated graded modules in the equi-I-invariant case」に纏め,学術雑誌Journal of Algebraへ平成21年2月に投稿した。掲載の可否は5月現在まだ審査中のため未定である。 Hilbert係数の研究は,先行研究に対しSally加群による新しい研究手法を提起し,USD列の一般論を応用してe_0, e_1, e_2に関して,成田の定理の拡張など,解明が進んだ点で評価に値するが,e_3以降に関しては充分な解明には至っていない。Macaulay化の川崎理論をGorenstein化へ応用し発展させること,川崎理論の中で双対複体の果たす役割を他の複体が担えるかを解明すること,e_3以降のHilbert係数の果たす役割を解明することなど,これらの課題の研究は今後も継続し,USD列の理論の発展に寄与して行きたい。
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