研究概要 |
結び目の補空間の基本群である結び目群からの有限体上の線型表現について主に研究を行った.結び目群は有限生成群であるので,結び目群から有限群への準同型写像の個数は常に有限個になる.従って,結び目群から固定された有限群への線型表現の個数,あるいはその群への線型表現の共役類の個数はそれ自体が結び目の位相不変量となる.この線型表現の個数という素朴な位相不変量が結び目の分類や結び目群の間の全射準同型写像の存在問題にどの程度強力な不変量であるかについて鈴木正明氏(秋田大学)と共同で研究を行った. 具体的にはまず素数pを固定する.このとき結び目群から標数pの有限素体上の2次の特殊線型群への表現の場合について線型表現の共役類の個数を考える.そして,10交点以下の結び目の分類表であるReidemeister-Rolfsenの結び目の表にある各結び目に対して,素数pをいくつまで考えれば,結び目がこの表にある他の結び目と区別することができるかについて研究をし,その素数pの値を全て決定した.そして,得られた素数pの値とそれらの線型表現を用いて定義されるねじれAlexander多項式による結び目の分類に関する結果との比較を行った. また結び目群の問に全射準同型写像が存在すればそれらの結び目群の線型表現の個数に関して不等式が成立するので,これに関しても以前に和田昌昭氏(奈良女子大学),鈴木正明氏(秋田大学)との共同研究で得られていたねじれAlexander多項式を用いた全射準同型写像の存在のための必要条件から得られる結果との比較を行った.
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