研究概要 |
素な結び目の結び目群の間に全射準同型写像を用いて,素な結び目の間の半順序関係を定義することができる.この半順序関係は素な結び目の幾何学的な複雑さを測り比較していると考えられる.この半順序関係を具体的に決定するためには結び目群の間に全射準同型写像を具体的に構成する事が必要である.一方で全射準同型写像の非存在はいくつかの不変量(古典的にはAlexander多項式)を用いて決定することが可能である.特に標数pの有限素体上の2次元特殊線型群への準同型写像を用いて定義されるtwisted Alexander多項式は全射の非存在に関して強力な判定法を与える.本年度はtwisted Alexander多項式を用いて11交点以下の結び目のどの組み合わせに対して半順序関係が成り立つかについて鈴木正明氏(秋田大学),堀江啓一氏(Software Cradle),松本峰子氏(創価大学)らと共同で研究を行った.この研究はさらに高い交点数に関する研究のスタートとなることが期待される.また,11交点の結び目に対して初めて現れる幾何学的な現象もあるので,この結果を今後より詳細に調べていくことで今後の進展が期待される. これらの結果については2008年8月に行われたトポロジーとコンピュータ2008(東京工業大学)や2009年1月に行われたThe Fifth East Asian School of Knots and Related Topics(慶州教育文化会館・韓国)などで上記の共同研究者が報告を行った.
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