研究概要 |
ループ空間のホモロジーを研究する上で最も有効な道具の一つがcobar型のEilenberg-Mooreスペクトル系列である。ただし、実際の計算に適用する際には困難な収束性の問題を解決しなければならない。特別なループ空間の場合、little cube operadの空間をフィルター付けすることにより良い収束性を持つスペクトル系列が研究代表者の研究により得られているが、そのスペクトル系列がEilenberg-Mooreスペクトル系列と第2項から同型であることは知られていた。 前年度までの研究では、その第2項の前段階である第1項も標準的なEilenberg-Mooreスペクトル系列と同型になっていることが分っていたが、平成17年度の研究では、2重ループ空間の場合にその第1項をより詳しく解析した。2重ループ空間が、実Euclid空間内の超平面の配置の複素化という組み合せ論的対象と深く関係していることに着目し、超平面の配置の組み合せ論的構造から定義されるSalvetti complexというCW複体との比較を行なった。その結果、第1項もその微分もSalvetii complexの胞体構造により完全に記述されていることが証明された。この結果により、この場合のEilenberg-Mooreスペクトル系列の第1微分の具体的な公式が得られた。更に、この第1微分の公式は、2重ループ空間の自己写像を解析するために応用することができる。 この成果は、既に論文としてまとめられ、数理科学における中心的なe-printアーカイブであるarXiv.org,でmath.AT/0602085として公開中である。
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