研究概要 |
平成19年度は,前年までの研究成果を基盤とし,Borsuk-Ulam型定理の変換群論的な研究を行った. 第一に,同変写像に関するBorsuk-Ulam型定理の一般化を研究した.まず,Borsuk-Ulamの定理をレフシェッツ数を用いた証明を与え,その観点からの一般化が可能であることを示した.つぎに,Borsuk-Ulamの定理に関係するいくつかの定理を考察し,その一般化について新たな知見を得た.特に,同変写像の写像度に関する制限とコホモロジーとの関係について研究し,基本アーベル群の自由な作用と多様体のコホモロジーの関係から新たなBorsuk-Ulam型定理が得られることを示した. 第二に等変写像に関するBorsuk-Ulam型定理の一般化を研究した.ここで等変写像とはイソトロピー群を保つ同変写像のことである.まず,有限群Gが自由作用に作用するホモロジー球面からG表現球面への等変写像を考察し,等変Borsuk-Ulam型定理が成立することを示した.つぎに,等変Borsuk-Ulam型定理の逆問題として,等変写像の存在性について研究し,Borsuk-Ulam型不等式が成り立っている状況の下では,有限群の自由作用をもつ閉多様体からG表現球面への等変写像が存在することを示した.さらに,これらの研究から新たに派生した等変写像の等変ホモトピー類の分類問題を研究した.前年までの研究で巡回群作用の場合に多重写像度を導入したが,今回一般の有限群作用の場合に多重写像度を拡張することに成功した,この拡張された多重写像度を利用し,いくつかの非巡回群Gについて,向きを保つ自由G作用をもつ有向閉多様体からユニタリー表現球面への等変写像の等変ホモトピー類を分類することに成功した. 以上の研究により変換群論的Borsuk-Ulam型定理は大きく一般化され,今後の発展・応用も期待される.
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