研究概要 |
3次元射影空間の曲面は、各点毎に共役座標曲線の接線の組を対応させると直線全体の作る5次元射影空間内のリー2次曲面と呼ばれる2次超曲面内に含まれる2次元パラメータを持つ直線族と考える事ができる。リー2次曲面の符号数は(3,3)である。一方、リー球面幾何における曲面にも、2次元の直線族を対応させ、符号数が(4,2)の2次曲面に含まれることが知られている。符号数の違いにより、違った空間の曲面が扱われることになる。これは、2次曲面を記述するリー群を複素化するとリー環は同型であることから、実の幾何学の相違を表している。 この研究は、射影極小曲面とリー極小曲面という起源は全く異なる対象の変換理論をパラレルに進める事ができる(のではないかという)ことを示そうとするものである。 射影極小曲面は定義に従えば、2変数6階の微分方程式系で記述される曲面であり、方程式論的には困難な対象であるが、射影曲面の4次の不変量を用いれば単純な記述ができ、またDemoulin変換という新しい曲面を作る方法からみると幾何的には単純な構造を持つことがわかっている。さらに、Marcus(1980)とRogers and Schief(2002)により、それぞれ違った方法に基づいて、ある変換を許容することもわかっている。 この後者の方法を我々の目的に合うように、射影曲面論全体の枠組を整理した後、書き直すことを行なった。その結果、両者の方法の関係が明らかになり、アファイン球面についてのTzitzeica変換が特別の場合であるあり方もわかってきた。 次に、3次元射影空間内の曲面を上記の2次超曲面のなかの2次元直線族として表すPfaff系を定め、特に射影極小曲面に対応するPfaff系の特徴付けを行なった。この特徴付は、リー極小曲面についても、パラレルに実行できる。 しかし、射影極小曲面の変換を線叢の変換として理解することが主要な問題として残ったままである。リー極小曲面については球面叢の変換として捉えることになると思われるが、これも今後の課題として残っている。共同研究者とのDPW法を射影極小曲面及びリー極小曲面に対応する線叢に対して適用することも、未解決である。 関連する成果として、Fricke曲面の微分幾何構造を研究協力者と調べるうちに、等積構造を持つ曲面の問題に出会い、それを解決することができた。また、3次元双曲空間内の平坦曲面の特異点について、研究協力者とともに超幾何微分方程式の解を用いた研究をすることができ、新しい研究が進んでいる。共同研究者も同じ平坦曲面のクラスを一般的に扱う微分幾何的研究を始めていて、相互の成果を参照する条件があったので、有意義な交流が出来た。
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