研究課題
この研究の目的は、結び目の体積予想に代表される、三次元多様体の幾何構造と量子不変量の関係を明らかにすることにあります。ここでいう結び目の体積予想とは、有名なジョーンズ多項式の漸近挙動が結び目の補空間の単体的体積を決定するという予想です。前年度までの成果として、ジュネーブ大学のカシャエフ氏との共同研究により、ジョーンズ多項式を高次元トーラス上の積分として書き下すことに成功しましたが、具体的な結び目に対して積分表示を求め、逐次鞍点法を用いた極限の解析を行い、体積予想が成立していることを確かめました。この成果は、平成17年9月に大阪で開催されたモジュラーなテンソル圏に関する研究集会で発表済みです。また、双曲構造を許容する重要なクラスとして知られる二橋結び目に対して同様に積分表示を書き下し、被積分関数の臨界点が非退化であることを示すと同時に、モース理論を用いて鞍点法を適用する手法を開発しました。この技術は、一般の結び目に対しても適用されると期待されますが、まず平成18年3月にコロンビア大学で開催された、結び目の体積予想をテーマとする国際研究集会で発表しました。また、グコフ氏、村上斉氏らによって提唱された体積予想の一般化は、絡み目に対しては成立しないことが問題でしたが、平成17年度の高田敏恵氏らとの共同研究により、阿久津・出口・大槻不変量と呼ばれる、アレキサンダー多項式を一般化した不変量の漸近挙動が、ジョーンズ多項式の場合と同じアルゴリズムで求められることを発見し、この不変量を用いた体積予想の絡み目への一般化を現在模索しています。
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Journal fur die reine und angewandte Mathematik, (to appear)
Journal of Geometry 83
ページ: 153-163