この研究の目的は、結び目の体積予想に代表される、三次元多様体の幾何構造と量子不変量の関係を明らかにすることにあります。ここでいう結び目の体積予想とは、有名なジョーンズ多項式の漸近挙動が結び目の補空間の単体的体積を決定するという予想ですが、予想を証明する方針として、(1)結び目のジョーンズ多項式を高次元トーラス上の積分として書き下し、(2)モース理論を用いて鞍点法を適用し、漸近挙動の解析を行う、という立場でジュネーブ大学のカシャエフ氏と共同研究を行い、積分路の分割方法や非主要項の絶対値の評価など、解析的な問題点をクリアしていきました。現在、結び目・絡み目の図式から、体積やチャーン・サイモンズ関数を含むノイマン・ザギエ関数を導く方法に関する論文、任意の結び目について上記(1)を実現するアルゴリズムを解説する論文、いくつかの結び目について上記(2)が実行可能であることを示す論文を同時に執筆中です。また、共同研究者の村上順氏により、ホワイトヘッド絡み目とボロミアン絡み目の阿久津・出口・大槻不変量の漸近挙動が、それらを特異点に持つ錐多様体の体積とチャーン・サイモンズ不変量を与えることが示されました。これは、グコフ氏、村上斉氏らによって提唱された、結び目の体積予想の一般化を、さらに絡み目に拡張する試みです。
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