研究概要 |
われわれは,新しいコンパクト・アインシュタイン多様体を構成した. 具体的には,2次元球面上の,n次元球面をファイバーとするファイバー束の上にアインシュタイン計量を構成した. 方法は,1978年にD.Pageが,初めて等質的でない宇宙定数正のコンパクト・アインシュタイン多様体を構成したときのやり方にならっている.この方法は,なぜかPageの仕事以来,用いられていなかったものである. これは,まずカー・ドジッター・ブラックホールという,宇宙定数正のアインシュタイン方程式の,回転するブラックホール解から出発する.そのうち2枚の事象の地平線にはさまれた領域を選び,これをウィック回転によってリーマン計量に直し,さらにスケール変換しながら2枚の地平線が限りなく近づく極限を取る.こうしてコンパクト・アインシュタイン多様体が得られる.そのうちのいくつかの例は,ファノ多様体上の円周束の構造をもつ. このようにして得られるコンパクト・アインシュタイン多様体のうち,佐々木計量をもつものが特に重要である.これは,弦理論における,ADS-CFT対応という,重力場とゲージ場の等価性を導く予想に関連して,近年注目されている対象である. カー・ドジッター・ブラックホールも佐々木計量も,キリング・ベクトル場をもつアインシュタイン計量である.われわれは,カー・ドジッター・ブラックホールから構成される佐々木計量に対し,双方のキリング・ベクトル場の対応も明らかにした.
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