幾何構造を保つ微分同相群およびその部分群の代数的、位相的研究を以下の4つの観点から行った。 1.リプシッツ同相群およびリプシッツ写像の位相的、代数的構造の研究については、リプシッツ多様体間のリプシッツ写像空間の位相的性質の考察を行い、いわゆる逆写像定理がこのカテゴリーでも成り立つ事を示した。また標準的U(n)作用をもつ複素n次元空間C^nを考え、コンパクト開位相の下でのその同変リプシッツ同相群の恒等写像成分の1次元ホモロジーは非自明で連続的モデュライをもつ事を示した。この結果はコンパクト開リプシッツ位相に関する結果と比較して興味深い。 2.同変微分同相群の構造の研究については、実n次元空間R^nに有限群が作用している場合、その同変微分同相群の1次元ホモロジーを決定した。応用として、軌道体、コンパクトハウスドルフ葉層、局所S^1作用をもつ3次元多様体に対してその構造を保つ微分同相群の1次元ホモロジーを決定できる。これらはそれぞれの幾何構造を解明する上で重要と思われる。 3.特異点をもつ葉層構造を保つ微分同相群の1次元ホモロジーの研究については、モース関数による余次元1葉層を保つ微分同相群の1次元ホモロジーを決定した。また、複素モース特異点をもつ余次元2葉層についても部分的知見を得た。 4.部分多様体を保つ微分同相群とその交換子の研究については、その構造を保つ微分同相群は完全群である事を示し、さらにその交換子の長さについても議論した。
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