偏微分方程式の解の数値的検証を目的として最適化・再定式化した簡易Newton法の収束定理とその応用に関する論文が研究雑誌J.Comput.Appl.Math.から出版される予定であり、現在印刷中である。この論文では、有限要素法による楕円型方程式の孤立解の数値的検証法をテーマとしている。Newton法の収束定理は原理面がとてもclearであり、理論的観点からは大変素晴らしいのであるが、偏微分方程式の解の数値的検証にこれを利用するには計算効率が悪過ぎて実用的でないとこれまで研究者の間で信じられて来たように思われる。筆者の確立した新しいversionの収束定理を用いると既知の数値的検証アルゴリズムを凌ぐ効率で解が検証可能であることを具体例の検証によって明らかにした。 次に、筆者は、偏微分方程式で記述される力学系における熊手型分岐点の存在証明によく利用されるCrandall-Rabinowitzの分岐定理を拡張・一般化した。今回筆者が得た分岐定理の持つ、Crandall-Rabinowitzの定理に見られない特長は、数値的検証法に直接応用可能であること、およびHopf分岐点の存在証明にも利用できることである。現在この研究をテーマとした論文を準備中であるが、そこで取り上げるHopf分岐点の検証例の計算には、上記の改良されたNewton法の収束定理を核としたアルゴリズムが利用されている。
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