研究概要 |
基礎支配方程式を厳密にスペクトル分解し,その上で各成分毎の方程式を差分近似して数値解析するスペクトル差分法には解析手法上に数理論的な制約は存在せず,現在までに,単連結または(場が対称で二重連結性が自動的に導入されてしまう)二重連結領域における種々の基本的な境界条件,初期条件,物理的対象場,物理領域で流れ場,温度場を成功裏に解析してきている.他方で,二重周期の楕円関数を変換要素の一部に利用することにより,あるいは有理関数の写像変換等を利用することにより,多重連結領域全体を一つの基本領域に写像できる可能性が拡大し,その結果スペクトル差分法の適用性を飛躍的に発展させられることが判明してきている. そこでまず写像用の等角座標系を指定した時,物理面の座標を精度よく決定する方法の確立を図る.通常はSylvesterの終結式により極めて大きな高次代数方程式の根あるいは単に高次代数方程式の根あるいは超越方程式の復素根から選択することになるので,必要な根を模索する方法の確立が必要である.そこで解析に先立ち代数方程式の根の扱い方を工夫した. ついで具体的に軸対象2重連結領域における定常自然対流の解析に座標変換の中にヤコビの楕円関数を組み込み,2重連結性条件を導入して,初期値境界値問題としてスペクトル差分法による解析を試みた.その結果,境界を形成する各閉曲線に沿うスカラー量の勾配の周回積分が零であると条件がとりあえず妥当なことが判明した.
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