研究概要 |
電気化学振動反応において現れる時空間パターンの分岐解析を簡単なモデルを通して行った。すなわち振動場のダイナミクスをもつ反応拡散系に大域的な抑制項を加えたモデルを提案した。振動場の空間的カップリングでは,分岐点近傍では一様な振動のみが安定に観測される。ところが,大域的な抑制項の影響で一様な振動モードのみが抑制され,それにより,空間的に非自明な±1モードの相互作用が重要な因子になることを示し,そのことが電気化学振動反応において種々の時空間パターンが現れる本質であることを突き止めた。すなわち,今まで懸案になっていた,回転波と定在波の選択問題に分岐理論的な説明を与えたことになる。我々は,その退化特異点近傍の分岐解析を行い,それにより数値計算結果を非常によく説明しうる分岐図を描くことにも成功した。また逆にそれにより,出現する時空間パターンを先験的に予測することも可能になったといえる。実際の実験に対応する完全なモデルではまだ分岐解析を行っていないが,定性的にはよい一致を見た。これは実験でコントロールするパラメーター空間の中で航海地図を与えたようなもので,実際に新しいパラメーターが実験でも見つけることに成功した。また,分岐解析の結果,±1モードのみならず0モードも合わせた3つのモードの相互作用がより複雑なパターンを生み出すことがわかった。すなわち一様振動と回転波や定在波がスーパーインポーズしたような時空間パターンが安定に現れるパラメーター領域も見つけ,目下これが実験に還元できるか検討中である。さらに,次年度以降は,より実験に近いフルモデルにおいて同様の分岐解析を試み,分岐解析がどこまで実験を制御しうるか可能性を検討する予定である。
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